定積分で面積を求める問題とその解き方を扱います。
今回の問題では、定積分の式を立てる際に必要となります、「どちらが上側か」を調べる方法に力点をおいて解説させていただきます。
まずは、問題文からどうぞ。
問題
$$曲線y=x^3+x^2と直線y=2xとで囲まれる図形の面積の総和を求めよ。$$
実はこの問題は、囲まれているところが2ヶ所ありまして、面積の総和(合計)という問題文にしました。2ヶ所それぞれの面積を求め、それらを足し合わせるという方針をとります。
まずは交点のx座標を求める。
曲線と直線とで囲まれているところがあるとのことですから、どこかで
両者は交わっているはずです。
どこで交わっているかをつきとめるべく、交点のx座標を求めてみます。
【答案例】
$$y=x^3 +x^2 とy=2xとの交点のx座標を求める。$$
$$2式を連立してyを消去すると、$$
$$x^3 +x^2=2x$$
しばらくは、方程式(3次方程式ですね)を解く作業に入ります。
【答案続き】
$$x^3 +x^2-2x=0$$
$$x(x^2 +x-2)=0$$
$$x(x+2)(x-1)=0$$
$$x=-2,0,1$$
2次,3次などn次方程式を解く際は、因数分解をためしてみるのでした。
今回は共通因数xでくくり、さらに()内の2次式もわりと簡単に因数分解できました。(そうつくりました)これにより、交点のx座標が3つ求まりました。
交点を求めた結果から、xがー2から0の間と、0と1の間に囲まれている部分があることが分かります。(x=ー2より左側と、x=1より右側は曲線と直線は交わらず、図形を囲むことはないです。)
これにより、面積を求めるための定積分の積分区間(∫の右の2つの小さい数)は
$$\int_{-2}^0 と\int_0^1 $$
とわかりました。
区間内でどちらが上側にあるか調べる
次に、定積分の中身、インテグラルの右側が正確に書ければ、あとは積分計算だけとなります。
面積の定積分の式の中身は「上側の曲線(直線)ー下側の曲線(直線)」
となることは前の記事で扱いました。したがって、この問題では
$$積分の中身をx^3+x^2-2xにするか2x-(x^3+x^2)にするか$$
正確に判断する必要があります。
3ヶ所の交点が分かっただけの段階では、曲線と直線の上下の位置関係は分かりません。3次関数のグラフの知識を使えば上の絵の②であることが
わかりますが、ここではもう少し調査してみます。
3次関数など、グラフの概形(およその形)を調べるときは微分して増減表をかくのが基本でした。
ー2<x<0では3次関数が上側とわかりましたが、0<x<1では細かい話ではありますが、直線が上と断定できていません。(「凹凸」を調べれば解決することはできますが数学Ⅲの範囲ですのでここでは取り上げません。)今は3次関数のグラフがどういった形かということよりも、むしろ直線との位置関係が知りたい、位置関係だけが知りたいのです。
極値を求めるときや、その関数のグラフ自体のおよその形を知りたい時は、微分して増減表を書いていけば良いのですが、今回の問題のように、2つの曲線(直線含む)の位置が上か下かを調べるときは、次のように
不等式を立てて解いてみる(不等式に聞いてみるという感覚ですかね。)
ことが有効です。
上側にあるとは、y座標がより大きいということですから、
$$区別するためy_1 =x^3+x^2 とy_2 =2x とyに番号をつけますと$$
$$y_1 >y_2なのかy_1<y_2なのかを知りたいときは$$
ためしに不等式をたてて解いてみると良いです。
【答案続き】
次に、
$$x^3+x^2>2xを解いてみると、$$
$$x^3+x^2-2x>0$$
$$x(x^2+x-2)>0$$
$$x(x+2)(x-1)>0$$
$$y=x^3+x^2-2x=x(x+2)(x-1)は$$
$$x^3の係数が正、x軸とx=-2,0,1で交わることから$$
$$不等式の解は、$$
$$-2<x<0,1<xとなる。$$
$$これより、y=x^3+x^2とy=2xとでは$$
$$-2<x<0ではy=x^3+x^2が上側、$$
$$0<x<1ではy=2xが上側にあると分かる。$$
途中の、x(x+2)(x-1)>0を解く時には、3次関数のグラフの知識を使って解決しました。
交点を求める時の方程式を解く作業と途中までほとんど同じです。
実際に、積分して面積を求めていきます。
【長かったですが最後の答案です】
以上より、求める面積は
$$\int_{-2}^0 (x^3+x^2 -2x)dx$$
$$=[\frac{1}{4}x^4 +\frac{1}{3}x^3-x^2]_{-2}^0 $$
$$=-(4-\frac{8}{3}-4)$$
$$=\frac{8}{3}$$
と
$$\int_0^1 \{ 2x-(x^3+x^2)\}dx$$
$$=\int_0^1 (-x^3 -x^2 +2x)dx$$
$$=[-\frac{1}{4}x^4 -\frac{1}{3}x^3 +x^2 ]_0^1 $$
$$=(-\frac{1}{4}-\frac{1}{3}+1)$$
$$=\frac{5}{12}$$
との総和であるから
$$\frac{8}{3}+\frac{5}{12}=\frac{37}{12}\dots(答)$$
まとめ
$$y_1=f(x)とy_2=g(x)の上下の位置関係が知りたい時は$$
$$f(x)>g(x) (f(x)が上)を解いてみる$$
増減表は必ずしも必要ないです。不等式の解が、すべての実数や解なしとなることもあります。解くのが大変なときもあります。
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